Matsuda.k020618

余暇政策論

松田 恵子

 

ISL破綻後の動き

 2001年春のISL社の破綻を受けて、その業務、特に放映権部門でのビジネスを引き継いだ独キルヒメディアであったが、そのキルヒメディアまでもが2002年4月8日、経営の破綻を表明した。大会まで二ヶ月をきった土壇場での破綻ということで、関係者のみならず世界中のメディアが大きな懸念を表した。更なる混乱を避けるためにも、後任の会社を一から探している余裕は無い。結局、スイスにあるキルヒの系列会社であるキルヒスポーツにその権利を移管することで、この騒動は一応の解決をみた。

 

今回のワールドカップに先立ち、ISLに続きキルヒメディアまでもが破綻した。これらが意味するものは何であろうか。

 

・放映権の高騰が両者の破綻の原因なのか。

「キルヒの破たんを招いた最大の原因は、サッカーなどスポーツ放映権の高騰といわれる。 同社が国際サッカー連盟(FIFA)に支払った02年と06年W杯放映権料は約17億ドルに上り、1998年仏大会の10倍以上に跳ね上がった。FIFAが五輪の放映権高騰などに刺激され、入札制を導入したことがきっかけだ キルヒはこの権利を基に番組映像を製作し、世界各国のテレビ局に売って投資を回収するが、バブル化した放映権料のために販売交渉はスムーズに行っていない。」(神戸新聞)

  下線部;今回の2002年ワールドカップの放映権は、前三大会の合計が約440億円なのに対し、その倍以上の1140億円とされている。これは、それまでサッカーを世界中に根付かせようと放映料を安く抑えていたFIFAが、五輪のテレビ放映権の高騰をうけてその有益性に着目し、入札制度を導入したことによる。

 しかし、これに対して電通国際プロジェクト・メディア局次長の海老塚修氏は、両者の破綻の原因は放映権で得られる収益を当てに事業を広げ過ぎたためであると反論する。彼の主張によると、放映権高騰の中でも各国に放映権を売るというビジネス自体は上手くいっていた。しかし、その権利を背景に得られる収益に過剰な期待をかけ、実態以上の利益を金融機関に示して資金借入を行った。事業を広げたものの、見込み通りの成果が出なかったために債務だけが膨らんだというのである。

http://www2.asahi.com/2002wcup/special/katarou/020409a.html(朝日新聞社)

   

電通;adidasと共に、先に倒産したISL社の母体となった企業。長い間FIFAと密接な関係にあり、日本におけるマーケティングの総括権はこの電通にあると言って良い。ワールドカップの放映権に関しても、広告代理店として、キルヒと各テレビメディアの橋渡し的役割(キルヒから日本国内の放送権を委託され、国内メディアに販売)を担っていた。

    

 スカパーの戦略と成果―全64試合のテレビ放映権を獲 得した有料CS放送

http://www.yomiuri.co.jp/hochi/wc2002/may/o20020506_65.htm